滋賀県の省エネ診断は誰のため? 第2回|1件13.8万円の県費負担を数字で検証
滋賀県の省エネ診断は国の制度併用なら1件1〜2万円。県独自診断に累計約1億1,600万円を投入する理由は何か
令和8年度、滋賀県の省エネ診断支援事業は9月中旬に受付を終了した。当初予定されていた令和9年1月15日より、およそ4か月も早い終了である。
省エネ診断は、事業者がエネルギー使用状況を把握するための重要な制度だ。設備更新や省エネルギー対策を進める出発点にもなる。しかし、診断を希望する事業者が、年度途中で支援を受けられなくなっている。そうであれば、その原因を検証する必要がある。
滋賀県が実施する独自の省エネ診断には、令和7年度決算で1件あたり約13.8万円の県費が使われていた。一方、国の省エネ診断制度を活用し、事業者の自己負担分を県が全額助成する方式もある。この方式なら、県の直接的な助成額は1件あたり約1万〜2.3万円となる。
両者の差は約6〜14倍に達する。
さらに、令和2年度から令和8年度までの県独自診断への予算計上額は、累計約1億1,600万円。そのうち約1億円は、国の制度を活用することで圧縮できた可能性があるという試算も得られた。
滋賀県の省エネ診断で問われる県費の使い方
これは単に「費用が高い」という話ではない。
限られた予算を使って、より多くの県内事業者を支援する方法はなかったのか。
県費の使い方は、十分に比較検討されてきたのか。
前回の記事「滋賀県の省エネ診断は誰のため?」では、制度の早期受付終了と予算配分の問題を取り上げた。
今回は、公表資料と当協会の試算を基に、さらに踏み込んでその実態について数字を通して検証する。
1.閉じたのは診断で、設備補助金は3,106万円残っている
令和8年度の滋賀県省エネ診断支援事業は、9月中旬に受付を終了した。
ところが、同じ事業所向け支援の設備導入補助には、当時3,106万円の予算が残っていた。
省エネ診断は、事業者が設備のエネルギー使用状況を把握し、効果的な更新計画を立てるための入口となる。診断を受けた事業者が、その結果を踏まえて設備投資へ進むことが期待されている。
しかし、診断の受付が先に終了すれば、その入口は閉ざされる。新たに診断を受けようとする事業者は利用できない。
一方で設備更新を支援する予算は残っている。
この状況は、診断と設備導入を一体的に進める制度設計として、十分に機能しているといえるのだろうか。
もちろん、設備補助の残額だけで制度の失敗を断定することはできない。診断と設備補助では、予算の使途や申請条件が異なる。残額を自由に振り替えられるわけでもない。
しかし、診断の受付は早期に終了し、設備補助予算は残った。この事実は、支援制度全体の予算配分を検証する理由になる。
なぜ診断の予算が先に尽きたのか。より多くの事業者に診断機会を提供する方法はなかったのか。
その答えを考えるため、まず診断制度の仕組みを比較してみたい。

※受付状況と残額は、2026年9月時点の資料による。
2.国にも同じ対象を診断する制度がある
滋賀県の省エネ診断には、大きく分けて二つのルートがある。
一つは、滋賀県産業支援プラザに登録された専門家による県独自の診断。もう一つは、国等が実施する省エネ診断を利用し、その事業者負担分を県が助成する方式である。
国の制度としては「省エネ最適化診断」と「省エネお助け隊」がある。

※料金は税込。国制度の診断区分によって異なる。
これらを比較すると、診断対象に大きな重なりがあることが分かる。
ここで注目したいのは、県の設備導入補助金の申請要件である。県独自診断だけでなく、国の診断も要件として認められている。
つまり、少なくとも対象要件と補助金申請資格の面では、国の制度によって代替できる範囲が存在する。
事業者にとっての違いは、主として診断費用の自己負担である。
しかし滋賀県は、その自己負担分を助成する制度も令和4年度から用意している。
この方式なら、事業者は自己負担を抑えて国の診断を利用できる。また、県は診断費用の全額を負担する必要がない。
さらに滋賀県産業支援プラザ自身も、国等が行う省エネ診断を推奨している。
それならば、なぜ県独自予算を全額投入する独自診断を主軸とし続けているのだろうか。
県独自診断に国制度では提供できない特別な効果があるのなら、その違いを客観的なデータで示す必要がある。
3.1件あたりの県費は約10倍
実際に、滋賀県で省エネ診断1件あたりに投入される県費を比較してみよう。
公表資料によれば令和7年度の県独自診断は、決算額16,710,262円に対して実施件数121件だった。
したがって、1件あたりの県費は次のようになる。
16,710,262円 ÷ 121件 = 約138,101円
約13.8万円である。
一方、国制度の事業者負担分を県が全額助成する場合はどうか。1件あたりの直接的な助成額は10,120〜23,100円となる。

人件費を含めた比較では、県独自診断は国制度への相乗りに比べて約6〜14倍の県費を必要としている。
事業費のみで比較しても、約5〜12倍の差がある。
滋賀県の省エネ診断に費用差に見合う効果はあるか
もちろん、県独自診断と国制度の診断内容が完全に同一であるとは限らない。訪問回数、専門家の対応範囲、診断後の支援などに違いがあれば、その効果も比較する必要がある。
また、国制度への相乗りにも県の事務費は別途発生する。そのため、助成額だけで行政経費の全額を比較できるわけではない。
しかし、約10倍という規模の差がある以上、県独自方式を選択する合理的な根拠が求められる。
例えば、診断後の設備更新率、省エネルギー量、CO₂排出削減量などを比較する。そうすれば、費用に見合う成果があるかを評価できる。
現時点で確認した資料からは、これだけの費用差を正当化する定量的な比較結果は確認できていない。
問題は、県独自診断が高額であることそのものではない。その費用に見合う効果が、検証されているかどうかである。
4.累計約1億1,600万円、うち約1億円は圧縮できた可能性
省エネ診断におけるこの費用差が複数年度にわたって積み重なると、どれほどの金額になるのだろうか。
令和2年度から令和7年度までの6年間を見てみる。滋賀県独自の診断に計上された予算は、累計96,818千円(約9,682万円)である。
さらに令和8年度の当初予算19,216千円を加える。すると、合計116,034千円(約1億1,603万円)となる。
滋賀県の省エネ診断を国制度への相乗りで試算すると
当協会の試算では、国制度への相乗りを基本とする場合の必要額を、従来の投入額の15%と仮定した。
これは、診断1件あたりの費用差に加え、事務費などの余裕も考慮した試算上の前提である。
その結果は次のとおりとなった。
| 期間 | 県独自診断への投入額 | 相乗り方式の必要額(試算) | 圧縮可能額(試算) |
| 令和2〜7年度 | 9,682万円 | 1,452万円 | 8,230万円 |
| 令和8年度当初予算 | 1,922万円 | 288万円 | 1,633万円 |
| 合計 | 1億1,603万円 | 1,741万円 | 9,863万円 |
※万円単位の表示は四捨五入している。
計算式は次のとおりである。
圧縮可能額 = 県独自診断への投入額 ×(1 − 0.15)
この前提では、投入額の約85%に相当する約9,863万円を圧縮できた可能性がある。
試算の前提と注意点
ただし、この金額は実際に発生した損失額ではない。
令和2〜7年度の数値は予算ベースの集計であり、決算額ではない。また、国制度への相乗り助成が制度化されたのは令和4年度である。そのため、令和2・3年度にも同じ仕組みを適用できたとは断定できない。
国の予算枠、診断実施機関の処理能力、制度ごとの診断内容の違いも考慮する必要がある。
したがって、約1億円という数字は、一定の仮定を置いた圧縮可能額の試算である。
それでも、これほど大きな差が生じるのは事実である。県がどのような比較検討で予算配分を決めてきたのか、確認する価値は十分にある。

5.より合理的なルートはあった。それでも使われた国費診断は約2%
滋賀県は、国制度への相乗り助成を令和4年度から制度化している。
つまり、県独自診断より少ない県費で事業者を支援できるルートは、すでに存在していた。
では、実際にどちらのルートに県費が配分されていたのだろうか。
当協会が整理した令和6年度の診断県費の配分を見ると、次のようになっている。
- 県独自・プラザ登録専門家ルート:約97%
- 国制度への相乗りルート:約2%
- その他・内訳未確認:約1%
令和6年度の診断県費総額は13,663,328円である。

※割合は資料に記載された概数。残る約1%の内訳は未確認。
その大部分が県独自診断に使われ、国制度への相乗り助成はごく一部にとどまっていた。
制度としてより廉価なルートを用意しても、ほとんど活用されなければどうなるか。県費削減の効果は限定的である。
滋賀県の省エネ診断の配分理由を確認したい
もちろん、この配分だけで、県や事業運営者が意図的に特定のルートへ誘導したと判断することはできない。
事業者自身の選択、診断内容の違い、制度の周知状況など、複数の要因が考えられる。
だからこそ確認したい。
二つのルートの違いは、事業者にどのように説明されていたのか。
費用と効果を比較する資料は用意されていたのか。
県は両ルートの実績を把握し、配分を見直す仕組みを持っていたのか。まさかとは思うが、県独自予算を消費することが目的になってしまってはいないか。
令和6年度に約97%対約2%という配分が生じた理由は何か。それを明らかにすることが、今後の制度改善につながるはずである。
6.圧縮できた県費があれば、何ができたか
仮に診断に使われる県費を削減できた場合、その財源をどのように活用できるだろうか。
一つの選択肢が、省エネルギー設備の導入補助である。
令和7年度の診断実績121件を、すべて国制度への相乗り方式で実施したと仮定する。その場合、県の直接的な助成額は約122万〜280万円となる。
実際の診断決算額約1,671万円との差は、約1,390万〜1,550万円である。
滋賀県の省エネ診断費を設備補助に回すと約19件分
このうち圧縮可能額の下限側である約1,390万円を、設備導入補助に活用した場合を考えてみよう。
公表資料によると、令和7年度の設備補助は事業費50,006千円、実施件数68件である。
これをベースに試算すると、1件あたりの平均補助額は、
50,006千円 ÷ 68件 = 約73.5万円
となる。
したがって、
1,390万円 ÷ 73.5万円 = 約18.9件
つまり、約19件分の設備補助に相当する金額である。

これは単純な試算であり、実際に19件の補助を追加できたことを意味するものではない。
設備補助には申請要件や予算上の制約があり、補助額も事業者ごとに異なる。また、平均補助額は促進区域分6,011千円を含めるかどうかによって変わる。
しかし、年間約1,400万円は設備補助約19件分に相当する。これは、県費の使い方を考えるうえで一つの目安になる。
13年間の予算で見る滋賀県の省エネ診断
さらに、平成25年度から令和7年度までの13年間の事業所向け予算を整理した。予算総額は約7億6,919万円である。そのうち設備に届いたのは約4億9,047万円、診断予算は約9,682万円だった。使われずに残った額は約1億8,190万円である。
当協会は、滋賀県の省エネ診断を相乗り方式に転換していた場合も試算した。設備補助等に活用できた余地は、約2億6,420万円に広がっていた可能性がある。
予算を節約すること自体が目的なのではない。
同じ県費で、より多くの事業者の省エネルギー対策を実現できるか。
その視点から制度を評価することが重要なのである。
7.県に確認したいこと
ここまで、滋賀県の省エネ診断について検証してきた。明らかになったのは、県独自診断と相乗り方式の大きな県費負担の差である。
ただし、費用差だけで制度の優劣を最終判断することはできない。
当協会の立場について
当協会は、国の省エネ診断事業の実施機関である。同時に、滋賀県産業支援プラザの登録専門家として県の診断事業も担っている。
つまり、当協会は両方の制度で業務を行える立場にある。
国制度への相乗り方式が拡大すれば、国事業の実施機関である当協会に業務上の利益が生じる可能性もある。
一方で、当協会は県独自診断も担っており、現行制度のもとでも業務を行っている。
本記事の目的は、特定の事業者や専門家の利益を主張することではない。
限られた県費が、県内事業者の省エネルギー対策に最も効果的な形で使われているかを検証することである。
そのため診断の質、事業者への支援効果、制度の安定性なども含めた検証が必要である。
その検証のために、滋賀県および滋賀県産業支援プラザには、少なくとも次の三点について説明を求めたい。

① 比較検討の記録は存在するのか
県独自診断と国制度への相乗り方式について、費用や支援効果を比較した記録はあるのだろうか。
県独自診断を主軸とする判断に至った根拠を確認したい。
診断回数や診断後の設備導入率、省エネルギー効果などを比較した資料があれば、公開していただきたい。
② ルート別の実績はどうなっているのか
令和4年度から令和7年度までの各年度について、県独自診断と国制度への相乗り方式の実施件数、県費負担額、事業者への案内方法を明らかにしていただきたい。
令和6年度の約97%対約2%という配分が、どのような経緯で生じたのかを検証するために必要な情報である。
③ 今後の制度改善をどう考えているのか
例えば、国制度への相乗り助成を基本とする。そのうえで、国の予算枠や対応能力が不足する場合に県独自診断で補完する。こうした方式は検討できないだろうか。
また、診断1件あたりの県費だけでなく、成果も見る必要がある。省エネルギー量やCO₂排出削減量による費用対効果の評価は、行われているのだろうか。
重要なのは、誰が制度を運営しているかではない。
制度がどのような成果を生み、その成果に対して県費がどれだけ使われたのかを、県民が検証できることである。
最後に:滋賀県の省エネ診断は誰のためにあるのか
今回の検証で、改めて考えたいことがある。
省エネ診断は、予算を使うために実施するものではない。
滋賀県内にある事業者のエネルギーコストを減らし、設備更新を促進し、CO₂排出量を削減するためのものである。
診断の実施件数を増やすだけでは足りない。実際の省エネルギー効果につながらなければ、制度の目的を果たしたとはいえない。
同じ成果をより少ない県費で実現できるなら、その方法を検討する必要がある。逆に、県独自診断に高い費用を上回る効果があるなら、その根拠を示すべきだろう。
今回は、約10倍の費用差と、累計約1億1,600万円の予算規模を示した。約1億円という圧縮可能額の試算も示した。いずれも、制度を検証するための出発点である。
私たちは、脱炭素政策そのものに反対しているのではない。
むしろ、限られた県費で、より大きな省エネルギー効果とCO₂削減効果を生み出すことを求めている。
県民の税金を使う以上、効果を測り、結果を公開し、改善し続ける仕組みが機能しているのか。
そして、その判断の根拠を県民に説明できるのか。
問われているのは、誰かの意図ではなく、制度設計の合理性と県費の使い方である。
滋賀県の省エネ診断は誰のためにあるのか。
その答えは、予算をどれだけ使ったかでは示せない。県内事業者にどれだけの成果を届けられたかで示されるべきではないだろうか。
試算のための主な出典・参考資料
- 滋賀県の省エネ診断は誰のため? 令和8年度の早期受付終了を検証(ESDA前回記事)
- 省エネ最適化診断と省エネお助け隊の比較表(対象要件・事業者負担額)
- 省エネ最適化診断(一般財団法人 省エネルギーセンター)
- 令和8年度 省エネ診断支援事業(滋賀県産業支援プラザ)
- 令和8年度 省エネ・再エネ等設備導入加速化補助金(滋賀県産業支援プラザ)
- 令和7年度当初予算・収支決算書「負担金補助および交付金に関する調書」
- 令和8年度当初予算「主要事業説明」(滋賀県CO₂ネットゼロ推進課)
- 委託料に関する調書・脱炭素経営支援事業予算積算書
- ESDA「滋賀県実施率動向(13年間)」
- ESDA「滋賀県事業所向け予算動向」(2025年7月20日)
- ESDA「令和8年度 事業所向け省エネ支援事業について」(2026年9月17日)
- ESDA「別紙 情報共有資料 第8版」(2026年9月19日)
※各数値は、2026年9月27日付の検証資料を基に整理した。県への追加確認により修正される可能性がある。

